Monologue 3 ~指揮者と“未来”に向けた合唱曲~
小学六年生の時初めて音楽と出会い、中学生へと進学しました。中学生になると小学校とは違い、授業は難しくなり、授業について行けてない日々が続いていました。
しかし小学生の頃に音楽に触れたからか、音楽の授業だけは大好きでした。リコーダー(縦笛)はソプラノからアルトリコーダーへと変わる様に、変声期となる中学生の音楽授業の中にも“合唱”が加わります。
どこの中学校にもあるかは分かりませんが、“合唱コンクール”なるものが毎年11月に開かれます。クラス対抗となって、学年統一の課題曲一曲と、クラスが自由に選んで歌う自由曲を一曲、計二曲を歌います。
自由曲にはいくつか候補があり、音楽の授業の時間に一度全ての曲の音源を聞いてから、選ぶ形になります。
この合唱コンクールは、全学年行われ、最優秀のクラスには合唱コンクールの二日後に開かれる文化祭で発表できる権利がもらえます。
初めての合唱コンクール…変声期となった中学生には、パートも3~4つに分けられました。
9月から本格的に合唱コンクールに向けた練習がスタートし、当時中学一年の私は楽しみでしたが、色々と問題もありました。
自由曲、各々のパート、伴奏者は次々に決まりましたが、肝心の合唱指揮者が決まらない状態でした。
しかしその時、なぜか私が指揮者になりました。なぜ私が指揮者になったのか、推薦されたか、消去法か、立候補したか…肝心な所は忘れてしまいました…。
何にしてもした事のない指揮をしなければならない…私はとても焦りました。音楽の授業以外にも合唱練習が朝や昼休み、そして放課後にもあり、クラスメイトからたどたどしい指揮に文句を言われながらも、練習を行いました。
練習はとても大変でした。しかし、普段話さないクラスメイト達が私の事を思って、必死になって協力してくれました。ある女子からは一緒に手を振って歌いながら練習してくれました。またある時は忙しいにも関わらず共に残って練習に付き合ったりもしてくれました。
いつの間にか、クラスが歌によって一つになっていきました。私も、クラスのみんなもその時は無我夢中だったのを覚えています。
そして迎えた11月の合唱コンクール本番の日・・・。
一年生8クラスある中で、私のクラスは二番目であった事を記憶しています。
最初の曲は課題曲の“夢の世界を”。曲調はゆったりでありながらも後半はダイナミックになります。緊張はしましたが、落ち着いて終える事が出来ました。
二曲目は自由曲。曲名は“明日へ”と言う曲です。アップテンポの四拍子の曲であり、指揮をするのも歌うのもとても難しい曲です。この曲を完成させるまでにとても時間をかけて本番まで持って行きました。
緊張、恐れ…いろんなものが混じりました。私は合唱、伴奏、指揮の三つを一体にする事を意識しました。ホールに響いたピアノと声…そして拍手の音…気が付けばすべてが終わっていました。
やりきった…でももっと出来た…そんな事を思いながら終了後を過ごしました。
結果発表はその日の放課後に校内放送に伝えられます。最優秀賞は私のクラス、そして指揮者賞は私であった事を告げられました。
歓喜の声と拍手…私はひっそり泣いていました。周りの人達と協力として目標に向かって進み、勝ち取った物の大きさは計り知れないものでした…。
私が合唱と言う物が好きになったのはここからでした…。
最初に聞いた自由曲の候補、私たちが演奏した“明日へ”、そして課題曲の“夢の世界を”…曲は違うにしても、いずれも共通するものがあります。
それは“未来”と言う言葉です。“明日へ”と“夢の世界を”の歌詞を見ると、決して過去にこだわる事はなく、“まだ見ぬ明日へと走っていくよ”、“出かけよう、語り合おう、素晴らしい僕らの夢の世界を”等…どれも過去を振り返らずに、前へ、前へ歩いている歌詞、明るい曲調なのです。
勿論曲によりますが、中学生と言う多感な時期、将来を決める事に対する不安等に向けたこれらの歌詞の曲…それを中学生にとってこれからの人生に向けた大切な言葉を、歌によって表現するという事はとても凄い事であると思います。
寧ろ大人にもこうした曲は大人になっても歌って欲しいと思いますし、大人になった時だからこそ、この曲の意味を噛みしめて欲しいと思います。
クラスが一体になった合唱コンクールの様に…思春期の多感な時期に、何かに向けて打ち込んだものが何か一つはあるのではないでしょうか…。
その様な意味も込めて、今回の或る音楽会で歌う曲の半分は、“未来”に向けた歌詞を乗せた合唱曲を選曲しました。
本年度の或る音楽会の少しネタばらしになりますが…私が指揮した二曲…“明日へ”と“夢の世界を”はオープニングを飾ります。
指揮ではなく、初めて歌う形になります。どの様な形で歌うかは…今後掲載していきます。
次回は合唱…歌を歌う方の世界への出会いについて記します
つづく…。
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